
近年、日本の建設業界や運送業界における深刻な人手不足を背景に、スリランカ人技能実習生の受け入れを検討する企業が増加しています。親日国であり、勤勉で穏やかな国民性を持つスリランカからの人材は、多くの現場で貴重な戦力として期待されています。しかし、実際に雇用する企業担当者様にとっては、「彼らは日本の現場をどう感じているのか」「文化や言葉の壁によるトラブルはないか」といった不安も少なくないでしょう。
本記事では、表面的な情報だけでは見えてこない、スリランカ人技能実習生の「本音」に焦点を当てて解説します。彼らが日本の現場で感じる仕事のやりがいや喜び、そして直面している苦労や悩みとは一体どのようなものでしょうか。彼らの率直な意見を知り、相互理解を深めることは、離職を防ぎ、長く安心して働いてもらうための重要な鍵となります。受け入れ企業の皆様が、実習生とより良い信頼関係を築き、共に成長していくための具体的なヒントをお届けします。
1. 親日国スリランカからの人材が日本の建設・運送現場で活躍している理由
日本の建設業界や運送業界において、慢性的な人手不足は喫緊の課題となっています。そうした中で、近年急速に存在感を高めているのがスリランカからの技能実習生たちです。ベトナムやフィリピンといった東南アジア諸国からの人材受け入れが一般的だった現場に、なぜ今、インド洋の島国であるスリランカの人々が増え、重宝されているのでしょうか。その背景には、単なる労働力の補填にとどまらない、彼ら特有の「国民性」と「スキル」が大きく関係しています。
まず挙げられる最大の理由は、スリランカが世界有数の親日国であるという点です。歴史的な結びつきに加え、スリランカは国民の多くが敬虔な仏教徒であり、日本人の持つ道徳観や価値観と高い親和性を持っています。目上の人を敬う礼儀正しさや、穏やかで協調性を重んじる性格は、チームワークが何よりも重視される日本の建設現場や物流倉庫の作業において非常に好意的に受け入れられています。彼らは真面目に仕事に取り組み、日本式の規律や安全確認のルールにも素直に適応しようとする姿勢が強いため、現場監督や日本人スタッフからの信頼を得やすいのです。
次に、コミュニケーション能力の高さも大きな武器となっています。スリランカでは英語が準公用語として広く使われており、多くに実習生がある程度の英語力を有しています。日本語がまだ未熟な段階であっても、英語を介して意思疎通が図れることは、安全管理が最優先される建設・運送の現場においてリスク低減につながります。また、日本語学習への意欲も高く、ひらがなやカタカナだけでなく、現場特有の専門用語を熱心に覚えようとする姿が多くの職場で評価されています。
さらに、彼らの身体的な適性も見逃せません。熱帯気候に属するスリランカで育った彼らは、日本の高温多湿な夏の暑さに対して比較的強い耐性を持っています。炎天下での作業が多くなる建設現場や、空調管理が難しい荷捌き場などにおいて、彼らのタフさは大きな戦力となります。
このように、精神的な親和性、言語的なアドバンテージ、そして環境への適応力という3つの要素が噛み合い、スリランカ人技能実習生は日本の過酷な現場において欠かせないパートナーとなりつつあるのです。彼らが日本を選び、汗を流してくれる背景には、単に稼ぎたいという思いだけでなく、日本という国への憧れや敬意が根底にあることを理解することが、彼らと良好な関係を築く第一歩となるでしょう。
2. 実際に働いてわかった!実習生が現場で感じるやりがいと直面する壁
スリランカから来日した技能実習生たちが、日本の建設現場や物流拠点で実際に働き始めて最初に感じるのは、圧倒的な技術力と規律正しさへの驚きです。彼らの多くは、母国での経験と日本の現場とのギャップに戸惑いながらも、日々の業務を通じて独自の「やりがい」を見出しています。
建設業界で働く実習生の声を聞くと、最も大きな喜びとして挙げられるのが「高度な技術を習得できること」です。日本の建設現場における安全管理の徹底ぶりや、図面通りに正確に施工する緻密さは、スリランカの実習生にとって学ぶべき宝庫です。鉄筋の結束スピードが上がったり、重機の手元作業で日本人職人と息が合うようになったりした瞬間に、彼らは自身の成長を強く実感します。また、完成した建物を見て「自分もこれを作った」と家族に写真を見せることが、大きな誇りとなっています。
運送・物流関連の現場では、荷扱いの丁寧さと効率的なシステムに感銘を受ける実習生が少なくありません。仕分け作業や梱包業務において、チーム全体が連携してミスなく荷物を送り出すプロセスに関わることで、責任感と達成感を味わっています。さらに、残業代を含めた給与が母国の家族の生活を支え、兄弟の学費や家の建築資金になることは、辛い仕事を乗り越えるための強力なモチベーションです。
しかし、現場には喜びだけでなく、厳しい「壁」も立ちはだかります。最大の障壁はやはり言葉とコミュニケーションの問題です。教科書で習った日本語と、現場で飛び交う専門用語や方言、略語は全く異なります。「そこ、もっと寄せて」「あれ持ってきて」といった指示の意図を瞬時に汲み取れず、日本人上司から厳しい口調で叱責され、自信を喪失してしまうケースもあります。特に安全確認が最優先される建設現場では、一瞬の判断遅れが事故につながるため、どうしても指導が厳しくなりがちで、それを「怒られている」「嫌われている」と受け取ってしまう文化的なすれ違いも発生します。
また、気候の違いも身体的な負担となります。常夏の島国であるスリランカとは異なり、日本の冬の寒さは彼らにとって未体験の過酷さです。屋外での作業中に手足がかじかみ、思うように体が動かないことへの焦りやストレスは、日本人が想像する以上です。さらに、日本の職場特有の「空気を読む」文化や、時間厳守へのプレッシャーも精神的な疲労の原因となります。
それでも、多くのスリランカ人実習生は持ち前の明るさと勤勉さでこれらの壁を乗り越えようと努力しています。現場の日本人スタッフが彼らの文化や宗教的背景(仏教徒が多く、親日的な傾向があることなど)を理解し、単なる労働力としてではなく仲間として接することで、信頼関係は劇的に深まります。喜びを共有し、苦労を分かち合う姿勢こそが、人手不足に悩む日本の現場を支える鍵となるのです。
3. 文化や言葉の違いをどう乗り越える?トラブル回避のためのコミュニケーション術
スリランカからの技能実習生は、一般的に識字率が高く教育水準も良好であるため、日本語の習得が早い傾向にあります。また、親日的な国民性で真面目に取り組む人が多いため、建設や運送の現場でも貴重な戦力として期待されています。しかし、どれほど優秀であっても、育った環境や文化が異なれば、現場でのコミュニケーションに摩擦が生じることは避けられません。特に安全管理が最優先される現場において、認識のズレは重大な事故につながりかねないため、具体的な対策が必要です。
まず知っておくべき決定的な違いは、ボディランゲージです。スリランカでは、首を左右に軽くかしげる動作(首を横に振るように見える動き)が「YES」や「了解」「同意」を意味することがあります。日本人がこれを見て「NO(拒絶)」や「わかっていない」と誤解し、「真面目に話を聞け」と叱責してしまうケースが散見されます。この動作は彼らにとって肯定のサインであることを、日本人スタッフ全員が理解しておくだけで、無用な誤解やストレスを大幅に減らすことができます。
次に、指示出しにおける「ハイコンテクスト」からの脱却です。日本の現場では「あれ」「それ」「いい感じにやっておいて」といった、文脈に依存した曖昧な指示が飛び交いがちです。しかし、外国人材に対しては、5W1Hを明確にした「やさしい日本語」を使うことが鉄則です。「あそこの資材を片付けて」ではなく、「青いシートの上にある木材を、倉庫の入り口まで運んでください」と具体的に伝えます。さらに、伝えた内容をその場で復唱させ、正しく理解できているかを確認する「復唱確認」のルール化が、ミスを防ぐ最も確実な方法です。
また、宗教や食文化への理解も信頼関係を深める重要な要素です。スリランカ人の多くは仏教徒ですが、キリスト教徒やヒンドゥー教徒、イスラム教徒もいます。それぞれの宗教行事や食事制限(ハラールや牛肉忌避など)について、雇用主側が関心を持ち、配慮する姿勢を見せることが彼らの安心感につながります。特にスリランカ人は紅茶を愛し、スパイスの効いたカレーを誇りに思っています。休憩時間に温かい紅茶を差し入れたり、彼らの国の料理について質問したりする雑談は、業務上の指示よりも深く心の距離を縮めるきっかけになります。
言葉の壁を乗り越えるには、一方的に日本語を押し付けるのではなく、日本人側も彼らの母国語であるシンハラ語やタミル語の挨拶(「アユボワン(こんにちは)」など)を覚える歩み寄りを見せることが効果的です。お互いの文化を尊重し合う土壌ができれば、建設・運送現場のチームワークはより強固なものになります。
4. 給料や生活環境についての率直な意見:長く働いてもらうためのポイント
スリランカからの技能実習生たちが日本の建設現場や運送業界で働く最大の動機は、やはり経済的な成功です。母国の経済状況が不安定な中、日本円での収入は家族を養うための命綱となっています。しかし、実際に働き始めると「想定していた手取り額と違う」という戸惑いの声が少なくありません。
彼らの多くは、額面の給与と、税金や社会保険料が控除された後の手取り額のギャップに驚きます。来日前に多額の手数料や借金を背負っているケースも多く、毎月の送金額を確保することに必死です。そのため、建設業や運送業のような身体的にハードな職種であっても、「もっと残業をして稼ぎたい」と希望する実習生が非常に多いのが特徴です。企業側としては、法定労働時間の範囲内で可能な限り稼げるシフトを組むか、あるいは控除の内容を丁寧に、納得いくまで説明する姿勢が求められます。単に「日本の法律だから」と突き放すのではなく、社会保険に加入することで得られる医療費負担の軽減などのメリットを具体的に伝えることが、不信感の解消につながります。
生活環境において、彼らが最も重視するのは通信環境と食生活です。家族とのビデオ通話やSNSは孤独感を癒やす唯一の手段であり、寮への無料Wi-Fiの完備は、給料の多寡と同じくらい重要な福利厚生と捉えられています。また、スリランカ人は食文化を非常に大切にします。毎日のようにスパイスを使ったカレーを自炊するため、換気扇の能力が高いキッチンや、スパイスの香りが充満しても問題のない住環境を提供することは、精神的な安定に直結します。
さらに、スリランカは年間を通じて温暖な気候であるため、日本の冬の寒さは彼らにとって想像以上の過酷さです。特に屋外作業が中心となる建設業や、荷下ろし作業のある運送業では、防寒着の支給や暖房設備の充実が、健康管理だけでなく離職防止にも効果を発揮します。
長く働いてもらうためのポイントは、彼らを単なる「労働力」としてではなく、生活者として尊重することです。給与明細の透明性を確保し、寒さ対策や自炊環境といった細やかな生活支援を行うこと。こうした配慮の積み重ねが信頼関係を築き、結果として失踪を防ぎ、真面目で優秀なスリランカ人実習生の定着へとつながっていきます。
5. 技能実習のその先へ:彼らが日本で叶えたい夢とキャリアプラン
技能実習期間の3年、あるいは5年という時間は、彼らにとって決してゴールではありません。多くのスリランカ人実習生にとって、日本での就労経験は人生を大きく変えるための重要な通過点です。実習を終えた彼らが描く未来図は、大きく分けて「日本でのキャリア継続」と「母国での起業」の2つの道に集約されます。
近年、特に注目を集めているのが「特定技能」制度への移行です。建設業界においては、技能実習で培った基礎技術を活かし、より専門性の高い業務に従事できる特定技能1号、さらには熟練した技能が求められる特定技能2号へのステップアップを目指す若者が増えています。特に特定技能2号は、在留期間の上限がなくなり、家族の帯同も可能となるため、日本に生活基盤を移したいと願うスリランカ人にとって大きな希望となっています。型枠施工や鉄筋施工、建設機械施工などの分野で、現場のリーダー格として活躍することを目指し、日本語能力試験(JLPT)や各種技能検定の勉強に励む姿は、日本の若手社員にも良い刺激を与えています。
運送・物流に関連する分野、例えば自動車整備の現場で働く実習生たちの間では、日本の国家資格である自動車整備士の資格取得が高い目標となっています。日本の整備技術や点検基準の厳格さは世界でもトップクラスであり、この資格を持つことは、日本国内での就労継続はもちろん、将来どの国へ行っても通用する「プラチナチケット」となります。彼らは日々の業務の中で高度な整備スキルを習得し、将来的には特定技能外国人として、人手不足が深刻な日本の物流インフラを支える中核人材になることを夢見ています。
一方で、日本で得た資金とノウハウを持ち帰り、母国スリランカでビジネスを立ち上げることを目標にする実習生も少なくありません。「日本式の高品質な住宅をスリランカで建てたい」「日本のような丁寧な物流サービスや自動車整備工場を地元で展開したい」といった具体的なビジョンを持っています。日本の建設現場で学んだ安全管理や工程管理、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の精神は、新興国のビジネス環境において強力な武器となります。彼らが帰国後に経営者となり、日本企業との架け橋となるケースも出始めており、経済的な好循環が生まれつつあります。
彼らのキャリアプランを支援することは、単なる国際貢献にとどまりません。明確な目標を持って働く人材はモチベーションが高く、企業の生産性向上に直結します。資格取得支援や日本語教育の提供など、企業側が彼らの「その先」を見据えたサポートを行うことで、より強固な信頼関係が築かれ、長く安定して働いてもらえる環境が整います。スリランカ人実習生が抱く野心的な夢は、日本の建設・運送業界の未来を明るく照らす可能性を秘めているのです。
